Life Farming Camp=生き方を耕すキャンプ。Life Farm Camp(以下、LFC)。LFCは、2年前に野沢温泉にオープンしたアグリツーリズム(*)を体験できるキャンプ場。森の中にあるオーガニックファームを舞台に食とエネルギーを学び、「水」と「山」をキーワードにこの村にしかない農的な暮らしを体験することで、私たち一人一人の人生の軸となる”心”が豊かになり、自分の生き方について改めて考えるというきっかけを作ってくれるキャンプでもあります。
梅雨前の週末、里山に位置するキャンプ場に滞在しながら、自然、食、環境、そして、農村の暮らしについて知るとても貴重な時間を過ごして来ました。
LFCでは、農業体験、薪割り、テント立て、焚き火の火起こし、料理、ブナ林のネーチャーウォーク、お寺での座禅等々、滞在中に体験できる様々なメニューが用意されています。今回はそのいくつかを体験。
東京から新幹線で最寄りの飯山駅まで約2時間。飯山駅から野沢温泉までは車で25分ほど。チェックインを済ませ、まず向かったのが、ブナ林の原生林。ネイチャーガイドの池田和夫さんに、山の原生林の成り立ちやこの季節に芽吹く植物についてなどの説明を伺いながら、ゆっくりと森の中をウォーキング。落ちているブナの実を食べたり、まさに五感を使って大自然を体感。
野沢温泉村は、標高600~1000mで、冬に降った雪解け水やその他シーズンに降った雨水は、山の上(ブナの木の森)から地下に染み渡り、湧き水となって村の豊かな暮らしを支えているそうです。なんと、50年かかかって山の下に降りてくるのだとか!
1時間強のネイチャーウォークを終えた後は、キャンプ場に戻り自分たちでテントを立て、その後は、お待ちかねの温泉! 野沢温泉には観光客が地元の人と一緒に入れる外湯(共同浴場)が13カ所もあります。今回は初日と翌日に、秋葉の湯と大湯、熊の手洗い湯に入りました。源泉掛け流しで、硫黄の香りと熱々のお湯が特徴。
キャンプ場では、自分たちで食事を用意することもできますが、オプションで地元の腕利きのシェフによる地産地消の料理を味わうこともできます。今回は村で「七良兵衛」というカフェ・レストランを営む平原孝将さんが料理をしてくださいました。温泉に行く前に自分たちが畑で採ったばかりの野菜や山ワサビなどのハーブがサラダや味覚のアクセントとなるソースとして登場したり、山菜を使ったパン、信州サーモンのカルパッチョなど、ここでし味わえない滋味溢れる料理が次々と運ばれ、至福の時間。ナチュールワインとの相性も最高で、ほろ酔い(いや、もっと?)の皆の笑い声が、シーンと静まり返った森に広がりました。
今回の1泊2日のツアーは10名ほどが参加。美味しい料理とワインですっかり打ち解け始まったキャンプファイアータイム。火起こしからスタート。火を囲むと話が弾みます。
雨音を聴きながら眠りにつき、翌朝は鳥のさえず地とともに5時に起床。目指すは徒歩20分ほどの丘の上にある禅寺、薬王山健命寺。本堂で座禅を組んだあと、お寺の歴史や建築について住職さんからお話を伺いました。
お寺のあとは前日のディナーでお世話になったシェフのカフェ、七良兵衛で朝食。朝食は併設する宿泊施設「白樺」のオーナーが、自家農園で育てたものを中心に調理して提供してくださいました。究極の理想の朝食!
LFCのキャンプのベースは、循環型のサステナブルなキャンプ場として、野沢温泉観光協会の会長も務める河野健児さんが2016年にオープンした「NOZAWA GREEN FIELD」。トイレはコンポストを使用していて、私たち宿泊者の排泄物はのちに畑の肥料になります。また、使用する歯磨き粉や石鹸なども土に還るものを使用します。
食事からアクティヴィティまで、地元の人のガイドやサポートで成り立っているLFC。たった2日の滞在でしたが、まるで友人の地元を訪ねているような感覚に。スノーボードやスキーでしか訪れたことがなかった野沢温泉の山。私をはじめ、リゾート地としての山しか知らなかった人は、初夏の山と村の方たちが暖かく迎えてくれることに新鮮な驚きを感じるかもしれません。山、水、村の人の暮らしを体験することで、都市の暮らしではなかなか実感できない自分自身も自然の一部であるという感覚を身体で感じることができました。自然、他の生き物に対して謙虚である姿勢を忘れないようにしなくてはと改めて考えさせられました。
次に野沢温泉村を訪れる時は思わず、「帰ってきたよ~!」と言いそうな自分がいます。
*アグリツーリズムとは、自然調和の生活が再評価されたヨーロッパが発祥で、都市に住んでいる人が農村で余暇を過ごすこと。
Life Farming Campの詳しい情報はオフィシャルサイトをチェックしてみてください!
https://thecampus.jp/lfc/
Photos by Pink
Text by Akko Matsuda