PRADA MODE OSAKA が大阪・うめきた公園で開催

1913年にイタリア・ミラノで創業されたハイブランドのプラダ。ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC/UNESCO)のSEA BEYONDの新た強化としてのパートナーシップをプラダグループとして発表したりと、海に精通する取り組みもしている。そんなプラダが定期的に開催している「PRADA MODE」がこの度、大阪で開催された。

PRADA MODEとは、その思想を表出すべく、プラダが2018年から展開している移動型の文化イベント。ファッションだけではなく、アートや空間、音楽、食、エンターテインメントなどあらゆる現代文化をテーマにした体験型のイベントで、マイアミ・香港・ドバイ・アブダビ・ソウル・ロサンゼルスなど世界都市を循環。コミュニティを包括した体験をつくり出すことを目的としている独自のイベントだ。

2023年5月には東京・目黒の日本重要文化財の一つである東京都庭園美術館の第9弾PRADA TOKYOが開催。歴史的建造物、美術館、そして美術館の周りの大きな庭園に展示された建築家の妹島和世氏のキュレーションによる独自のアート作品を通して、来場者がさまざまな形のアートに触れ、体験できる機会となった。

そして本年は2025年6月に、PRADA大阪が開催された。場所は大阪梅田のパブリックパーク「うめきた公園」。梅田の中心に誕生した新たな都市型のオアシスで、約4万5千平方㍍の緑豊かな空間に四季折々の植物が息づき、アーティスティックな野外ホールと周辺の高層ビルが共存する。そんな会場では、ゲストも終始リラックスした雰囲気で、作品や野外インスタレーション、パフォーマンスの多彩なコンテンツ触れられた。ゲスト達は芝生に寝転んだり、腰を下ろしてのんびりと食事をいただく姿が多く見受けられた。

注目は、プラダが2023年東京開催より再び妹島和世氏とコラボレーションした「犬島プロジェクト」 および PRADA MODEの第12弾という事。 彼女が西沢立衛氏と共同設立しているクリエイティブクルーの「SANAA」が、高齢化・過疎化している犬島をアートによって再生するビジョンを示す会となった。

犬島は、西日本の瀬戸内海、直島の近くに位置する小さな島です。 歴史的に、この島は採石場と銅の製錬所として知られており、20世 紀初頭には5,000人もの住民が住んでいたと言われています。その間、島の産業は徐々に衰退し、製錬所は100年近く放置されました。2008年には、島の合計人口は約40人、平均年齢は70歳となりました。同年、1980年代からベネッセアートサイト直島を運営していた公益財団法人福武財団が、製錬所跡地に犬島精錬所美術館 をオープンし、妹島和世とアーティスティックディレクターの長谷川 祐子を招き、ベネッセアートサイト直島プロジェクトの一環として、 島全体を変革。その未来像について考えました。妹島は段階的に作業を進め、古い住宅を改修し、ギャラリースペースを建設し、ワー クショップやコミュニティガーデンを企画し、訪問者が島をより深く 体験できるように宿泊施設を建設しました。

『犬島「家プロジェクト」』は、2010年にF邸のオープンとともに公開されました。プラダ モード大阪および犬島プロジェクトの開催に際し、プラダは妹島和世建築設計事務所による常設パビリオンを犬島ライフギャラリーに寄贈しました。この敷地内には「仮に浮かべる風景」と題されたカウンターも設置されています。これは、隣接するパビリオン建設の際に掘り出された土を用いてつくられた2つのカウンターであり、「循環と再統合」の象徴となっています。周囲の風景に静かに溶け込みながら、これらのカウンターは自然の一部となり、やがて再び大地へと還っていきます。

未来の世代へと手渡す環境を紡ぐ意志表明でもあるPRADA MODEと妹島氏のこのアクション。我々の身近にあるファッションを通じて時代を見つめ、世界と地球と向き合っているのだと、エキシビジョンの写真や模型そしてアートを通じて実感した。

会場となるパークのガーデンホールも妹島氏らが手掛けている。

また、ゲストにはPRADA特製の大阪名物「たこ焼き」や日本食の代表「おにぎり弁当」が振舞われ、長蛇の列に。「食」からもプラダの土地や文化への敬意を感じさせて頂いた。

エリンギと昆布だしで仕上げたヴィーガンたこ焼き。想像以上に旨みが効いていて、すっかりエリンギたこ焼きの虜に。

日本由来の柚や梅のフレーバーが香りが立つ、無添加の発泡ドリンク。甜菜糖の爽やかな甘みが、新緑の芝生と調和しさらに癒されました。

現代における美意識の真髄とは、やはり環境へのまなざしを内包してこそ成り立つものなのかもしれないと。そんなプラダの奥行きある思想と趣向に触れられたことに感謝しつつ、背筋が自然と伸びるような、そんな時間と空間でした。

PHOTO & TEXT : REINA SHIRASAKA

◼️PRADA MODE OSAKA / プラダ モード 大阪

場所:大阪梅田 うめきた公園 会期:2025年6/8(日)〜15(日)

◼️妹島和世 / KAZUYO SEJIMA / 建築家

茨城県生まれ。1981年に日本女子大学修了。1987年に東京で事務所を開設し、1995年に西沢立衛とともにSANAAを設立。個人で手掛けた作品には、『梅林の家』、『犬島「家プロジェクト」』、『日 本女子大学目白 キャンパス』などSANAAが手がけた 主な作品は、『金沢21世紀美術館』、『ROLEX ラーニング センタ ー』、『ルーヴル・ランス』、『グレイス・ファームズ』、『ボッコーニ大学 新キャンパス』、『サマリテーヌ』、『ニューサウスウェールズ州立美術 館拡張- ナーラ・バドゥ・ビルディング』、『Edward and Joyce LindeMusic Building(W18)』等々。2010年には、 第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展のディレクターに就 任。日本建築学会賞、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展金獅子 賞、ロルフ・ショック賞(ビジュアル・アーツ部門)、プリツカー賞、芸 術文化勲章、銀の定規賞、紫綬褒章、トーマス・ジェファーソン・メダ ル、高松宮殿下記念世界文化賞、王立英国建築家協会から2025 年ロイヤル・ゴールド・メダルなど、数多く受章。現在、ミラノ工科大 学教授、日本女子大学および大阪芸術大学の客員教授、横浜国立 大学名誉教授、東京都庭園美術館館長。2019年春夏コレクション の「PRADA INVITES」プロジェクトではプラダのバッグデザイナー を務め、2023年にプラダ財団で開催された展示会「Paraventi:17 世紀から21世紀の屏風」のデザイナー、そして2023年の「PRADA MODE」東京、2025年「PRADA MODE」大阪のキュレーターを務める

◼️PRADA MODE / プラダモード 

現代文化に焦点を当て、ユニークな体験を提供。世界の様々な場所で大規模なグローバルカルチャーイベントを次々と開催する巡回型プライベートクラブをイメージ。参加する事でブランドの趣向やイベントのテーマと話題に沿った美術や芸術、エンターテイメントのプログラムやコンテンツに触れることができる体験型エキシビジョン。

◼️PRADA /  プラダ https://www.prada.com/jp

1913年の創業以来、プラダは最先端のスタイルの代名詞。知的な世界観と概念、構造、イメージを流行にとらわれない規範を通じて融合。その概念は、単なるラグジュアリーな製品とハイブランドの域を越え、カルチャーを動かす、モードの先鋭。

THX